賠償請求、交渉に関する質問

なお、説明や判断が難しい質問には【難】とつけています。
また、交通事故事件特有の専門用語については、「役に立つ交通事故用語集」のページもご確認下さい。

 

質問一覧

損害賠償の対象になるのはどのようなものですか?(事故後~症状固定まで)

損害賠償の対象になるのはどのようなものですか?(後遺障害認定後)

賠償請求にはどんな資料が必要ですか?

会社役員(経営者)をしています。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

事故直前に就職(あるいは起業)したところでした。前年度の収入証明が出ません。

パートの主婦です。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

自営業者をしています。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

保険会社と示談書を締結しましたが内容に不満です。相手方本人にも賠償請求してもらえませんか?

弁護士に依頼したら治療期間が延長できますか?

事故の相手が保険に入っていません。後遺症が残っても補償は受けられないのですか。

交渉がまとまる割合はどのくらいですか。

 

 回答一覧

損害賠償の対象になるのはどのようなものですか?(事故後~症状固定まで)

治療費、入院生活にかかる日用品購入等の入院雑費(一日あたりの定額で支払われます。)、通院交通費、ギプスなどの装具費用、診断書料などが認められます。そのほか、事故により仕事を休まざるを得なくなった場合には休業損害、さらに入通院により精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料なども支払対象となります。これらの損害は、医師の診断によりもう治療しても改善があまり見込めない(症状固定)と診断されれば、症状固定以後の通院、休業については、(後遺障害を除いて)請求できなくなります。 なお、不相当、過大な治療費や、歩行困難でない被害者のタクシー代などは、たとえ支出したとしても対象になりません。

損害賠償の対象になるのはどのようなものですか?(後遺障害認定後)

症状固定後に後遺障害が認定されれば、認定された後遺障害の等級に応じた慰謝料と、後遺障害等級に応じた逸失利益の賠償が認められます。しかし、症状固定後の治療費については、よほどの重傷でない限り認められません。症状固定(もうこれ以上は治療による改善が見込めない)と診断された以降の治療は、賠償責任の観点からは必要性がないと考えられるためです。ただ、後遺障害認定によって得た保険金(賠償金)でリハビリ治療に通うことはできます。また、休業損害についても請求できなくなります。受傷による就労不能状態は、後遺障害の逸失利益で補償されていると考えるからです。

賠償請求にはどんな資料が必要ですか?

治療費については、診断書や診療報酬明細や不可欠ですが、加害者が任意保険に加入している場合には保険会社がこれらの資料を保有していることが多いので、加害者側の保険会社から入手します。通院交通費について、タクシー利用なら領収書が必要ですが、電車、バスなら自宅から病院までの合理的な経路を説明できれば領収書は不要です。

休業損害については、勤務先からの休業証明書、休業前の給与明細、源泉徴収票、自営業者の方は前年度の確定申告書の写しなどが必要です。入通院慰謝料は、入通院期間に基づいて算出しますが、入通院期間は診断書や診療報酬明細に記載されていますので治療費の資料を集めれば計算可能です。後遺障害が認定された事案では、後遺障害診断書及び自賠責の後遺障害認定通知書が必要となります。
その他、事案によっては、治療経緯や症状に関して、被害者の方の体験を陳述書や報告書にまとめて提出することもあります。物損については車の修理費や保管料、レッカー移動費や買換費用の裏付けとなる領収書、請求書、支払記録などが必要です。

会社役員(経営者)をしています。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

会社役員の休業損害は、役員報酬の補償と理解されます。役員報酬には、一般に、営業、業務管理、人事、資金調達などの経営に関する役員業務そのものの対価と、経営する会社が稼ぎ出した利益の配分を受ける地位という二つの性質が併存していると理解されています。
交通事故のために仕事ができなかった場合、前者に相当する部分は賠償の対象になりますが、後者は賠償対象に含まれません(休んでいても役員として利益の配分を受けられることには変わりがないため)。問題は、仕事に対する報酬と地位に対する報酬をどうやって区別するかですが、画一的な基準はありません。会社の規模や事業内容、役員の具体的な仕事内容などさまざまな要素を総合的に考慮して判断することになるでしょう

事故直前に就職(あるいは起業)したところでした。前年度の収入証明が出ません。

前年度の収入を証明できない場合でも、新たに就く仕事や起業により得られる収入見込みを証明できれば、賠償が認められることがあります。例えば、事故の時点で新卒者が内定をもらっていた場合には、勤務開始後に見込まれた同期社員の収入を基礎に休業損害や逸失利益が算定されます。また、医師などの専門職の場合は、同職種の平均収入や、被害者が前職で得ていた年収を基礎に算定することになるでしょう。

パートの主婦です。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

専業主婦の場合、賃金センサスに基づき、女性労働者の全年歴の平均賃金を基礎として算出します。パートタイム労働をしている兼業主婦の場合、パートの実収入額と上記平均賃金を比較し、いずれか高い方をもって計算の基礎とします。

自営業者をしています。休業損害(あるいは逸失利益)はどのように計算されますか?

事故直前の確定申告の所得額を基準に計算します。このため、売上げをごまかしたり、経費を多めに計上したりして実際の所得より低い額の申告をしていた場合、現実の所得よりも低い申告額でしか損害が認定されません。(ごくたまに、裁判上例外が認められることもありますが、申告額を超えた損害認定は、相当難しいと考えておくべきです。) これは、税務申告の際は自己の所得を過少に申告しておきながら、いざ損害賠償を行う場面では実際の高い所得額を主張するのは、矛盾しているとみられるからです。

保険会社と示談書を締結しましたが内容に不満です。相手方本人にも賠償請求してもらえませんか?

保険会社と示談書(または合意書、免責証書)を締結する場合、通常はその事故に関する損害の全部について解決することになります。したがって、相手方本人の賠償義務も無くなるので、重ねて相手方本人に賠償請求をすることは基本的にはできません。
例外的に、相手方の保険に損害範囲の限定や限度額があり、損害の項目を限定して示談した場合(物損事故に限るなど)や、額を限定して示談した場合(○○万円以下の損害に限るなど)には、後日改めて他の損害項目に対する賠償や限度額を超える損害の賠償を本人に求めることは可能です。ただし、通常一般の交通事故ではこのような制限つきの示談をすることはほとんどありません。

弁護士に依頼したら治療期間が延長できますか?

治療が長期化(3~6ヶ月以上)したときに、加害者側保険会社が治療の打ち切りを予告してくることがあります。 ケガが完治するまでに必要な期間は医学的な問題なので、弁護士が介入したからといってむやみに延ばせるものではありません。むしろ、適切な時期に治療を切り上げて後遺障害申請を行い、できるだけ高い後遺障害等級を認定させるのが弁護士の役割と言っても言い過ぎではありません。 

とはいえ、加害者側の保険会社が病状も考慮せず、ただ「6ヶ月経ったから」とか、「普通このくらいのケガなら治っている」との理由で治療を打ち切られるのは間違っています。弁護士は、保険会社が治療を打ち切る根拠を確認したうえで、不相当だと判断すれば延長させるよう交渉することもあります。

事故の相手が保険に入っていません。後遺症が残っても補償は受けられないのですか。

いいえ。ご自身(又はご家族)の自動車保険から受けることが出来る場合があります。
人身傷害補償特約
に加入していれば、加害者が任意保険に加入していない場合であっても、被害者の過失の有無にかかわらず、ご自身側の保険会社から保険金が支払われます。また、後遺障害を認定された事件(あるいは死亡事案)で、加害者が任意保険に加入していない場合や、任意保険に加入していても賠償額に制限があり十分な支払いが受けられない場合には、後遺障害の補償を含めた保険金の支払いをご自身(又はご家族)の自動車保険(無保険者傷害保険)から受けることができます

交渉がまとまる割合はどのくらいですか。

当事務所に限った話ですが、人損であれば、7~8割は示談で解決します(数千万単位の高額になれば訴訟移行することが多い。)ただし、事故状況について当事者の言い分が真っ向から対立し、過失割合が争いになる事案などでは、訴訟でないと解決しないこともあります。 また、物損事故のうち、代車費用や休車損、全損や評価損が争いになる事件は、弁護士が裁判例を引用しつつ説得しても、応じない保険会社も多く訴訟になりやすいと言えます。

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